滋賀県のある田舎町にアパートを借りて、ひとり暮らしをしていた頃。
アパートは二階建てで、部屋数10ほどのごく普通のアパートの1階角が俺の部屋にあたる。アパートの裏はちょっとした山になっていて、 身近に自然を体験できる場所でもあった。周りを見渡しても見えるのは山、山。自然を感じるのに絶好の場所とも言える。
季節が変わるたびに、その山や木が自然と移り変わってゆくのが体感できる。でも、昼間は仕事に出ているので自然を感じる余裕はなかった。 何となく、葉が赤く色づき染まった頃は秋だなぁと、一面が雪景色になれば冬だと、誰もが感じる程度で、自然が身近なところにあっても灯台下暗しとはこの事かも。
そのアパートに住み始めて間がなく、仕事や生活でいっぱっぱい。心に余裕がなかったから木や山の自然に気づかなかったのも無理はないか。
ある日、仕事が早く終わって、たまたまアパートの周りを散策していたら、アパートの側に山へとつながっているあぜ道があるのを見つけた。そのあぜ道と平行して小川まで流れている。自然がこんなすぐ側にあったなんて、こんな身近なところにあったんだと知った。散歩がてら、そのあぜ道を歩いた。
せっかく、自然をまじかで感じられるところに住んでいるのだからもったいない。灯台下暗しとよく言うけど、ほんと身近にあっても気付かない。 ジジくさいと言われるかも知れないが、何も考えずにあぜ道を歩き、目に映る自然を眺めていると、嫌な事やくよくよしていた事がどうでもよく感じたりする。
この土地に住んでみて思うのは、ネオンギラギラの都会より物静かで自然が側にあるような場所が、自分は本当は好きなのかも知れない。
でもさ、都会へ住むとこの感覚なんか忘れてしまうんだろうな。その土地に順応されて・・・。
ある時、自分の部屋のベランダにお客が来た。それは山猿。野生の訪問者だった。
ふと、窓の外を見るとベランダの手すりに動く大きな物が見え、ようく見ると山猿だった。熊が出るのはたまに聞くけど、山猿が俺の家のベランダに。 自然を体験できるのはいいけど、このお客さんは俺の家に何しに来たんだろう。自分の部屋から自然の山猿が見れるなんて、なかなかないよ。
それもまじかでね・・・。
その山猿と目が合った時、「何見てんだよ!」って目で訴えていたような気がする。不吉な笑いを浮かべながら・・・。
自然恐るべし!